鳥取県境港市出身の漫画家、故水木しげるさんの天井画で知られ、観光客に親しまれてきた大山寺支院の圓流院(大山町大山)が、来年から一般拝観を中止することを決めた。

 

本来の宗教施設としての活動に戻すのが理由だが、大山寺周辺の観光スポットとして定着していただけに、観光業界や地元に戸惑いが広がっている。来年は伯耆国「大山開山1300年祭」のメインの年を迎え、影響を与えそうだ。

 

圓流院は建物の老朽化に伴い、2009年に再建された。文豪・志賀直哉の「暗夜行路」ゆかりの蓮浄院が朽ちてなくなるなど、大山寺の歴史を物語る施設が失われることへの危機感や、大山寺周辺のにぎわいづくりにつなげようと寺と有志が再建計画を進めた。

 

圓流院は雪のない4~11月に観光客を受け入れてきた。天井に張り巡らされた水木さんによる108枚の妖怪画は圧巻で、09年のオープン以降、9年間で約11万8千人が訪れた。大山寺本堂とは谷を隔てた場所にあり、訪れた人たちをエリア全体に回遊させる効果もあった。

■限定的な開館

一般拝観を中止する理由について、圓流院の大館宏雄住職は「再建に伴う借金の返済が終わる7年間だけの限定的な開館。そもそも観光が目的ではない」と説明。「来年は大山寺の開創法要もあり、そちらに集中したい。本来の宗教活動の施設として活用する」と話す。

 

来春から当面、国重要文化財の阿弥陀堂が一般公開される毎月18日、周辺の清掃活動を行うボランティアの休憩に合わせて開館するが「天井画を見せるために開けるわけではない」という。

■ファンの寄進

しかし、再建当時を知る関係者は「広く大山に親しんでもらうきっかけになる施設にしようと取り組んだ。人に来てもらわないと、歴史も何も伝えることはできない」と指摘。

 

天井画は水木さんが無償で描き、全国のファンが寄進する形で再建費用の一部に充てた経緯もあり「水木さんや寄進して下さった方々に申し訳ない」と続けた。

 

「決まったことなので、外部からは何とも言えない」と話すのは、同じ支院の観證院の清水豪賢住職。「門戸を開いた寺の施設として引き続き開けてほしいが、こればかりは…」と言葉を濁す。

 

旅行業界も複雑な思いだ。大山開山1300年に合わせ、圓流院をツアーに組み入れたり、ウェブサイトで紹介する可能性もあったという日本旅行(東京都)は「観光の盛り上げは当事者の理解があってこそ。

 

多くの人に圓流院を見てもらいたかったが、別のスポットを探さざるを得なくなる」としている。(高﨏正範、山本圭介)

 

圓流院 江戸時代に創建された大山寺の支院。阿弥陀堂と夏山登山道の周辺にあり、明治の廃仏毀釈(きしゃく)で大山寺の寺号廃絶後、復興を許された大山寺支院10カ院の一つ。

 

画僧として知られる嗒然が住職を務めた。築後約200年が経過し、老朽化したため2008年夏に解体され、既存の材木などを使って再建。コンサートや絵画展も開かれた。

 

引用 日本海新聞 2017年12月6日

 

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