最近は正月に 棒鱈 を食べる方が少なくなってしまい、当店でも以前程入荷することはありません。
ただ昔からの 棒鱈 を食べているお客様は必ず毎年年の瀬にはこの棒鱈を注文されます。
棒鱈は江戸時代以前から、東北地方や北海道で獲れた真鱈(スケソウダラのものもある)を加工した保存食で、船で関西方面に運ばれて正月やお盆に食べられていました。
マダラを三枚におろして1~2か月天日干しをした干物で、半端に干してある「干し鱈」とはまた違い、棒鱈と呼ばれるように完全に乾燥していてカチカチに固く、バットのような棒状をしています。
棒鱈(ボウダラ)カチカチに固くなるまで干してあるので、柔らかくなるまで何日も水につけながら戻してから料理をします。
棒鱈をお正月に食べる習慣は主に京都や関西でのものですが、境港でもご家庭によってはおせち料理に食べるようです。
おせち料理にはそれぞれ由来があるのですが、数の子は「子孫繁栄」を願う縁起物、伊達巻きは巻物を表し知識が増えるようにとの願い、鰤は出世魚ですので出世を願っています。
棒鱈は、「たらふく(鱈福)食べれる」という意味で、食べ物に困ることがないようにと願うものです。
食べ方は甘露煮や里芋に合わせた煮物など煮物で食べる方が殆どです。
棒鱈煮と数の子、田作りのおせち料理。
ちなみに田作り(ごまめ)はカタクチイワシの干物を飴炊きにしたもので五穀豊穣を願います。
これはカタクチイワシを肥料として使った田畑が豊作になったことに由来していて、「五万米」「五真米」(ごまめ)とも呼ばれています。
今はお節料理を一から作る家は少なくなってきて出来合いの物を頼む方が増えていますので、棒鱈を食べる機会はなくなりつつありますね。
棒鱈と芋の煮物を河原などで作って食べる風習が、東北地方の「芋煮会」の起源と言われています。
芋煮会とは親睦を深める行事で、家族・友人・地域・職場などのグループで集まり、サトイモなどの芋を使った鍋を楽しむというものです。
東北地方の秋の風物詩となっていて、分かりやすく言えば桜の花を見て楽しむ花見の芋鍋版です。
こうやって見ると棒鱈は保存食としてだけでなく、地域の文化になくてはならない縁起物の一つだったんですね。
こうした文化、習慣はぜひ後世に残って行ってほしいですね。
日本各地にはくさや、ちりめんじゃこ、丸干し、みりん干し、塩鮭、生寿司(キズシ)など様々な干物があります。
いつも干物の事を調べたりすると思う事ですが、先人達がいかに魚を長持ちさせて食べるかという目的で知恵を絞って出来た干し物という保存方法が、今や一つの食文化として成り立ってるってすごい事だと思いませんか?