境港の海は境水道大橋で顔つきがガラッと変わる/妖怪の街の魚屋より

今日は時化の影響で魚が少なくて満足な仕入れが出来ませんでした。

一日二日ならまだしも、真冬になると結構な期間で時化が続いて漁師さんが海に出られない事がよくあります。

大きなカニ船などは3~4mの波でも出漁されるようですが、小さな漁船では3~4mの波だと危なくて漁に出れません。

当然市場に魚は水揚げされず魚の値打ちがどんどん上がっていきます。

今はもう少ないと思いますというかあまり聞きませんが、こういった荒天の時に無理して出漁される方が以前は多かったです。

時化で魚がない中で魚を獲ってくると高値で売れますので危険を承知で漁に出るのですが、私の直接の知り合いではない(知り合いの知り合い)漁師の方が海に落ちて亡くなられました。

遊びで乗るプレジャーボートではライフジャケット装着は義務付けられているのですが、漁師さんの場合は作業の邪魔になるのでライフジャケットを装着しない方が多いので、荒天時なんかに作業中に落ちるとほぼ死んでしまいます。

漁労の場合、一人で乗船する場合はライフジャケット装着が義務付けられているそうですが、中海なんかで一人で漁をされている方でライフジャケットを着ている方なんてあまり見たことがない気がします。

二人以上で船に乗っていれば残った方が操船して救助できるからという理由で義務付けられていません。

亡くなった漁師さんですが、残された船などの状況から落水しても船の周りにいて再度乗船しようと努力していたようで、船舷にびっしりと爪でひっかいたような傷や何かを引っ掛けようとした傷が残っていたそうです。

結局美保湾で水死体で見つかって船は琴浦町の方まで流されていたと聞きました。

ラダー(梯子)などが付いていない船や船内機では手をひっかける突起物がないので、落ちると一発アウトです。

船によじ登ることが出来ません。

仮にアンカー(錨)を打っていた場合でも船が流されないだけで自分の体は潮流に流されて船から離れてしまい、これもダメ。

要は一人で海に出て落水すると助かる確率は低いということです。

船がたくさんいるような場所なら別ですが、その場合でもホイッスルなどで注意を引いて気付いてもらわないとアウトです。

私も船釣りを楽しんでいた時はよく知り合いの漁師さんに一人では絶対沖に出るなと言われていました。

今なら海の危険さ怖さというのは理解出来るのですが、当時はあまり理解していないというか自分がそんなドジを踏んで落水することはないだろうと何の根拠もない自信がありました。

ライフジャケットだけは装着していないと海上保安庁のパトロール船に見られた場合、罰金刑になりますので装着していました。

ただ、波高が1mを超えると揺れが激しいので船釣りをしていても面白くないので、天気予報で1mを超える波高だと聞くと海にでるのはやめていました。

あとは東風がダメです。

東風の強い時は外江から境水道を東に進んでいくと境水道大橋を超えたあたりから三角波が立っています。

私はこれを見ると回れ右をして港に帰っていました。

中海と外海の境界線がこの境水道大橋付近で、潮の流れも波の具合も中海から一変します。

この状態で外海に出て行っても釣りにはなりませんし、海難事故でも起こして周りに迷惑を掛けたくなかったからです。

遊びで命を落とすなんて真っ平御免だと思っています。